2017年1月8日日曜日

樹形図の基本ルール

以下の例題1と2を参考にして、樹形図の基本ルールを説明する。
《基本ルール》
(1)樹形図を横断する枝の総和(太さ)は常に一定。
(2)発生確率が同じ事象の樹形図の枝の太さは同じ。
(3)樹形図は、根元から枝先まで一定の太さの糸を根元側で束ねた、糸の集合でもある。1本の「糸」は、事象の連鎖の1つの場合を表す。
(4)樹形図の根から展開した複数の枝を書き、その先で、複数の枝をいったん節に束ねて糸の束を再編成して再度複数の枝(個々の枝は複数の糸の束で作る)に展開することもできる。
 この基本ルールに従って樹形図の糸を自由に束ねた以下の様な樹形図を作ることもできる。
 このように、樹形図の最小構成要素の糸の形を、根から展開し、節に収束させ、再び節から展開する、波状の形を持たせることもできる。 
 それにより、独立なイベント毎に、樹形図を節から複数の事象の枝に展開して、再び節に収束した上で次の独立なイベントの複数の事象の枝に展開する。
 例えば数回サイコロを振るといった複数のイベントを貫く樹形図の糸を考える。その糸を、1回目のサイコロの目という事象が同じであるが、2回目のサイコロの目は異なるという複数の糸を1回目のサイコロの目の事象を表す枝に束ねることができる。

 また、以下の図の様に網目状の節を持つ樹形図を書くこともできる。
   以下でこの基本ルールに従って樹形図を書いて問題を解く例を説明する。

【例題1】
 箱の中には,両面表のコイン,両面裏のコインそして普通のコインの計3枚が入っ ている。
ここからコインを1枚取り出してフリップしたら表が出た。
このコインが両面表の コインである確率はいくらか?


【解答】
 この基本樹形図を使うことで、 
コインが両面表コインである条件付き確率は、2/3である。
(解答おわり)

【例題2】
 箱の中には,表表示コイン,裏表示コインそして普通のコインの計3枚が入っ ている。
ここからコインを1枚取り出す。

(1)そのコインが普通のコインの場合はフリップして出た面を観察する。
(2)そのコインが表表示コインの場合は表面を表示して置く。
(3)そのコインが裏表示コインの場合は裏面を表示して置く。
(4)こうしてコインの面を観察したら”表”であった。
このコインが表表示 コインである確率はいくらか?

【解答】
 この基本樹形図において:
 表表示コインが選ばれる確率は通常コインが選ばれる確率と同じなので、通常コインが選ばれる枝の太さ2sと、表表示コインが選ばれる枝の太さ2sが同じである。
 通常コインは、太さ2sの枝が「表面」が開く太さ1sの枝と、「裏面」が開く太さ1sの枝に分岐するが、表表示コインが選ばれた場合は、事象を分岐させるイベントを何も行なわないので、その枝の太さは2sのままである。
 この樹形図を使って計算する。コインが表表示コインである条件付き確率は、2/3である。
(解答おわり)

(補足)
 樹形図は、同じ確率で生じる事象に分離させると枝が分割されて各々の枝が細くなる。しかし、特にイベントが無ければ枝は太いままである。
  この例題1と例題2は同じ問題であると言える。例題1でも例題2と同じように、両面表のコインをフリップしないでも問題の結論は変わらない。

【例題3】
1つのさいころを投げ続けて、同じ目が2回連続して出たら終了するものとする。
4回目以内(4回目も含む)に終了する確率を求めよ。


【解答用に作る樹形図】
(ここでは、この問題を解くための樹形図を作って終わりにします)
以下の樹形図を作ります。
樹形図の枝の太さは、その枝の事象の確率を表します。

 上の樹形図は、事象を、「(前回と)同じ目」と「(前回と)違う目」という概念で分けた樹形図です。
 こういう樹形図が作れる理由は、
樹形図は、最細の糸という基本単位の糸を束ねて構成されていることに起因します。
 「糸」の1つは、樹形図の根元から枝までひとつながりである糸です。その糸は、出る目の数で示した数字の連鎖(3355)であらわすことができます。
 1つの樹形図の例として上図のように、各糸を束ねて、 樹形図の左から右に、(3の目・同じ目・違う目・同じ目)といった枝を構成するように束ねた樹形図が作れます。
 この様に、事象の連鎖を表す「糸」を自由に再編成することで種々の樹形図を書くことができます。
 この糸を再編成して束ねて作る樹形図は、樹形図の根元から枝先までの枝の順を、さいころの目が出る順に対応させねばならないという制約もありません。例えば、(1番目の目・4番目の目・3番目の目・2番目の目)という枝順の樹形図も作ることができます。

【樹形図を編集する例1】
 赤玉5個、白玉3個ある袋から一つの玉を取り出し、その玉を戻さずに2回目に他の玉を引く問題の場合。
この問題の樹形図は、少なくとも以下の2つの樹形図1と樹形図2に編集できる。
《樹形図1》

《樹形図2》

(これらの樹形図では、事象の連鎖の糸の総数は、8×7=56本あり、1本の糸の太さは、1sです)
 この2つの図の樹形図は、その枝を構成する事象の連鎖の糸の束が下図の樹形図3のように再構成されている。
《樹形図3》


【袋から玉を同時に2個取り出す問題】
袋から玉を順番に2個取り出す問題で、取り出す順番に関係付けられていない結果の確率を求める問題は、「コンビネーションを用いて良い定理」によって、袋から玉を同時に2個取り出す問題と等価な問題になる。袋から玉を同時に2個取り出す問題の樹形図は、以下のように考えて作れる。すなわち、同時に取り出した2個の玉が何であったかを順に確認する、第1に確認する玉と、第2に確認する玉と、の確認結果の事象を使ってあらわした以下の樹形図4が書ける。
《樹形図4》

第1の玉と第2の玉の区別は、袋から取り出した2つの玉が何であったかを確認する順番、すなわち、玉を見る順番である。
 その第1の玉と第2の玉は、玉を順番に取り出す問題での先後に取り出した玉に対応付けることができる。その逆に、第1の玉を後に取り出した玉に対応付け、第2の玉を先に取り出した玉に対応付けることもできる。そのため、先に取り出した玉と後に取り出した玉は、互いに対等である。先後が対等であるので、先の2つの樹形図1と樹形図2(玉を取り出す順番を入れ替えた樹形図)が同じ形になった。
 また、樹形図の事象の連鎖の糸の束で構成する枝を再構成した樹形図3について考察する。樹形図3で、左側から見た樹形図の形と右側から見た樹形図の形に変わりが無い。すなわち、先に取り出した玉と後で取り出される玉の関係は、その先後の順を逆に置き換えても変わらない。先後の玉の間には、両方の玉に対等な関係である、互いの玉が異なるという関係だけがある。
 これらのことから、「袋からの玉の取り出し問題において、玉の取り出し順を変えて問題を変更しても、問題の答えが変わらない定理」 が成り立つ。

【樹形図を編集する例2】
 赤玉3個、白玉3個、黒玉3個ある袋から、同時に3つの玉を取り出す問題の場合。
この問題の樹形図は、同時に取り出した3つの玉が何であるかを確認する1つ目の玉と、2つ目に確認する玉と、3つ目に確認する玉が、それぞれ何であるかを表す事象の連鎖の糸を考える。その玉の確認順を並び替えたあらゆる確認のバラエティの数3!=6つの事象の連鎖の糸を束ね、その束の太さを1sとする。
そして、全ての事象の連鎖を、赤m個、白n個、黒t個という形で表した玉の色分けの事象の連鎖の枝に分類する。すなわち、その玉の色分けの事象の連鎖の枝毎に区別して事象の連鎖の糸を編集した以下の樹形図を作成する。


リンク:
樹形図の基本ルール(その2)
高校数学の目次


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