2016年4月13日水曜日

半径1の円と直線の交点を座標軸を回転して解く

佐藤の数学教科書「図形と方程式」編の勉強

【問1】座標原点を中心にする半径1の円(x+y=1)と、直線3x+2y=kとが接する場合のkの値を求めよ。

(地道な計算練習を心がけよう)
 直観的に答えを求める解法を見つける感覚を磨くことも必要ですが、その他に、数学の力を薄っぺらな表面的なものにしないために、地道に方程式を解く計算練習を心がけましょう。
(1)方程式の難しい式を単純な形の式にして無理無く計算するコツを身につけましょう。
(2)式が急に易しくなる計算の大切な分岐点をしっかり覚えましょう。

【解答1】
(まず、方程式を書く)
上の計算では、計算の式をなるべく単純な形の式で記述するため、複雑な形の項をaとkに置き換えて表します。
この整った式で、xの解が重根になり1つの値のみが解になる場合が、直線が円に接する条件を満足します。それは、上の式で右辺が0になる場合です。

右辺が0になるためには、右辺の分子が0になるだけで良いので、その分子を求めるために、以下の様に、分母を共通化させた式に変形します。
右辺が0になるためには、右辺の分子が0になるだけで良いので、以下の式に単純化されます。
ここで、aとkの式(3)と式(4)を代入してkの値を計算します。
よって、もとめるkの値は、

k=±√13
の場合に、直線が円に接します。

これが直線が円に接する場合のkの値です。
(解答おわり) 

(ベクトルの概念で見ると方程式の風景が変わって見える)
 次に、ベクトルの観点で問題の方程式を見ることで見える計算の道筋に従って、やはり地道に問題を解いてみます。
【解答2】
先ず、方程式1と2から始める。
(3,2)というベクトルの単位ベクトル(長さが1のベクトル)の係数を使って式2を式3に書き直す。
 次に、点(x.y)の座標を、座標系を、(3,2)の単位ベクトルの方向のs座標軸と、それに垂直な方向、すなわちベクトル(-2,3)の方向のt座標軸で表した点の座標(s,t)であらわす。
その点の座標値(s,t)と(x,y)は上の式4と式5で変換できる。
(これは、ベクトルによる座標軸の回転変換の公式の応用です)
ベクトルの視点から見ると、式4と式5は合わせて、以下のベクトルの合成の式に見えます。
 この問題は、(x,y)であらわされる円の式と直線の式の交点が、2つの点では無く、1つの点になる条件を求めることです。
その問題を解くことは、(s,t)であらわされる円の式と直線の式の交点が、2つの点では無く、1つの点になる条件を求める問題を解くことと同じです。
 なぜなら、2つの(x,y)の点は2つの(s,t)の点であらわされるし、2つの(s,y)の点の解があれば、2つの(x,y)の点の解があるからです。
(これは、(x,y)と(s,t)が1対1対応の写像変換で結び付いていることを意味します。)

式4と式5を使って、式1の円の式を変数sと変数tで表してみます。
次に、式4と式5を使って、式3の直線の式を変数sと変数tで表してみます。
 式6で円があらわされ、式7で直線があらわされました。
この直線の式7を円の式6に代入して、交点(s,t)の解が1つだけになる条件を求めれば、それが問題の解です。
式7と式8によって、
交点(s,t)の解が、tの値がプラスとマイナスの2つの値になる解が得られました。
この交点(s,t)が1つだけになるのは、
t=0
になる場合です。
その場合は:
式10が与えるkの値が、求める解であり、
これが直線が円に接する場合のkの値です。
(解答おわり)

(備考1)
 パラメータkを変えて、2曲線が接触する条件を求める問題では、kの値が所定の値で接点(x,y)が1つになり、その値の近くのkの値では、2曲線の交点(x,y)が複数の点になることで判定する。接点(x,y)のx座標かy座標の一方の座標値だけを見て、その座標値が1つになるか複数になるかだけで判定してはいけない。

(備考2:座標変換について)

 このベクトルの視点に基づいた解き方では、式4と式5で定められる写像変換で座標値(x,y)を座標値(s,t)に変換しました。
 この写像変換では、2つの(x,y)の点は2つの(s,t)の点であらわされるし、逆に2つの(s,y)の点は、2つの(x,y)の点であらわされ、(x,y)と(s,t)が1対1対応の写像変換で結び付いています。しかも、この写像変換は、回転させた座標軸でグラフの座標を見るのと同じ変換であって、癖の無い、筋の良い写像変換です。

 この様に座標軸を回転させる写像変換以外に、座標軸を斜行座標軸に変換する写像変換を使うことでも、2つのグラフが接点を持つ条件を求める問題に使うことができます。

 しかし、2つの(s,t)の点に1つの(x,y)の点が対応するような、1対1で無い写像変換は使えません。

 また、座標点(s,t)がst座標平面上に描くグラフの形が、座標点(x,y)がxy座標平面上に描くグラフの形から大きく歪んで、
xy座標平面上で交差するグラフがst座標平面上で接するグラフに変換されるような写像変換も使えず、
xy座標平面上で接するグラフがst座標平面上で交差するグラフに変換される写像変換使えません。

リンク:
ベクトルによる座標軸の回転変換の公式
高校数学の目次

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