2011年8月13日土曜日

円の接線の公式を微分で導く

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「微分・積分」の勉強

なめらかな曲線の接線は、微分によって初めて正しく定義できる。
(ある直線と曲線の交点を求める式が重根を持つときその直線が必ず接線であるとは言えない。下図の曲線にO点で交わる直線と曲線の交点を求める式は重根を持つ。しかし、ABを通る直線のような方向を向いた直線でもO点で重根を持って曲線と交わる。)

【研究問題】円の接線の公式は既に学習していると思いますが、
接線は、微分によって初めて正しく定義できるので、
改めて、円の接線の公式を微分により導いてみます。

円 x+y=1 (式1)
この円の式全体を微分します。

《注意:恒等式の両辺を微分する演算》
方程式の左右の辺をxで微分した式が間違った式にならないためには、以下の条件が必要である。
▷(演算結果の有効性の条件1:微分可能であること)
 その計算をする場合は、その得られた式は、全ての項が微分可能な場合のみに、得られた式が有効になる。
上記の(式1)の両辺を微分する場合は、
変数yも微分可能である場合に限って、微分で得られた式が有効である。
(式1)の円の方程式で、x=1の点では、円への接線の傾きが無限大になって、変数yはxで微分できない、その点では、得られた式は無効である。

▷(演算結果の有効性の条件2:元の式が、恒等式であるか、xの恒等式と言えるために、元の式の変数yの解の1つのxの関数が存在する式であること。

(xの恒等式ではない等式の例)
例えば、
x=5,
という等式の両辺をxで微分した式:
1=0,
は間違った式である。
この等式、x=5, は、変数xに関する恒等式ではない。それは、その式には、変数yを変数xであらわす関数が存在しないからである。
この等式の両辺をxで微分した式は無効である。

(xの恒等式だと言える等式の例)
y=2,
という等式の場合は、その変数yにxの関数の、
f(x)=2, を代入すると、
2=2,
となる恒等式になる。その関数f(x)=2, が、変数yを変数xであらわせる関数である。
そのように、元の等式 y=2, のyにその関数f(x)を代入した等式がxの恒等式である。その恒等式の両辺が微分できる。
そうして、その等式の両辺を微分すると、
f '(x)=0,
0=0,
という恒等式になる。

式の両辺を微分する計算には要注意。
(両辺の微分演算の前提条件おわり)

 式1の左右の辺をxで微分して正しい式が得られるのは、以下の理由によります。
方程式1の解で、
y=f(x)
という、(陰関数)f(x)が存在する場合は、
式1の両辺をxで微分した式が正しい式になります。
 その理由は、
式1の方程式から、
y=f(x)
という陰関数の解が得られます。
式1のyを、式1から得られる解の1つのy=f(x)という解があらわすxの関数(陰関数)f(x)であるとみなします。yをそういう関数f(x)であるとみなせば、式1は、以下の計算で示すように、yにf(x)を代入した式1に等価な式の左辺が恒等的に1になります。
+(f(x))=1,

すなわち、式1は、yがそういう関数f(x)であるならば、1=1という恒等式を表しています。恒等式ならば、その恒等式をxで微分した結果も0=0になり、その式は正しい式になるからです。
《注意おわり》


式1の微分の際に、
微分の基本公式
(f・g)’=f’・g+f・g’
を使います。

x’・x+x・x’+y’・y+y・y’=1’ 
x’=1であって、また、1’=0であるから、
上の式は以下の式2になる。
2x+2y・y’=0 (式2)
接点(x,y)での接線の傾きy’は、
(yが0(xが1か-1の場合)で無い場合は)
式2を変形した以下の式3であらわせます。
接点を(x,y)とすると、式3は以下の式になります。
接線の式は、

点(x,y)は式1を満足するので、
+y=1
∴ yy+xx=1
この、円の接線の公式は既に学んでいる接線の式です。
(y=0の場合は)
y’=∞になって、y’が存在しません。
しかし、y’が存在しなくても、
dx/dy=0になって、dx/dyが存在します。
この場合の接線も上の式であらわされて、
x=±1
であらわされる接線があらわせます。
こうして、円の接線の公式が得られました。

  【研究問題その2】
楕円の式は高校3年の数学ⅢCで学びますが、高校2年でも、その式だけは覚えていても良いと思います。
楕円 x/a+y/b=1 (式1)
です。

この楕円の接線の公式は、微分により導けます。

この楕円の式全体を微分します。
その微分の際に、
微分の基本公式 (f・g)’=f’・g+f・g’
を使います。
x’=1であって、また、1’=0だから、
接点(x,y)での接線の傾きy’は、
(yが0で無い場合は)
式2を変形した以下の式であらわせます。
接点を(x,y)とすると、式3は以下の式になります。
接線の式は、

点(x,y)は式1を満足するので、 
(y=0の場合は)
y’=∞になって、y’が存在しません。
しかし、y’が存在しなくても、
dx/dy=0になって、dx/dyが存在します。
(その場合は、最初の計算を変えて、yで式全体を微分する計算を行うことで、改めて上の式を導きます。)
この場合(y=0の場合)の接線も上の式であらわされて、
x=±a
であらわされる接線があらわせます。

こうして、楕円の接線の公式が得られました。

 なお、下図のように、接線を持つグラフの集合方が、微分可能な点を持つグラフの集合よりも広いので、上の計算の様に、y≠0の場合と、y=0の場合に分けて計算する必要がありました。 
《下図に各種の関数の集合の包含関係をまとめた》

【研究問題その3】
なお、グラフの式の左右の式を同時に微分する場合は、
以下の注意をする必要があります。

yがxで微分可能な場合のみに成り立つ式を、合成関数の微分の公式を使って求めています。
y=f(x)
がxで微分可能で無い場合は、得られた式は使えないと、後で考えます。

また、
y=f(x)
という関数f(x)が存在しない場合は、
式の両辺を微分しても正しい式が得られるための前提条件である、y=f(x)を式に代入して方程式を恒等式にできる、という前提条件が成り立っていない。
そのため、その式の両辺を微分して得た式は間違っていると考えます。

【事例1】
x=0,
という方程式のグラフの場合には、
y=f(x),
という(陰)関数f(x)が存在しません。
その場合は、

微分すべき対象になる関数が存在しないので、
方程式:
x=0,
の両辺をxで微分した式:
1=0,
は、
無効な式になります

 事例2を参考にして考えると、
xy座標でのグラフを表す式の両辺をxで微分できる条件は:
「(dy/dx)が存在する点に限る」
という条件があります。
x=0というグラフでは、そのグラフのどの点(x,y)においても、
dy/dxが存在しません。
そのため、x=0の両辺をxで微分することはできない。


【事例2】 
以下のグラフ
y=f(x)
は、x=0の位置では変数xで微分不可能です。
このグラフは、
y≦0 :  x = −y^2,
y≧0 :  x = y^2,
という式であらわせます。
この式の左辺と右辺をxで微分した式は、
x=0
の位置で、
1=0・y' ,   ただし、y'=∞ ,
という式になり、
右辺が不定値を表す式になり、左辺の値1と同じでは無い、
無効な式になります。

【事例3】
y=0,
という方程式で表されるグラフの場合には、
y=f(x),
という関数f(x)が存在します。
その場合は、
方程式:
y=0,
の両辺をxで微分した式:
y'=0,
は、
有効な式になります。

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2 件のコメント:

  1. 名前:noname 日付:2015/2/27(金) 1:48

    円x^2+y^2=r^2上の点P(x[1],y[1])における接線の方程式は
    x[1]x+y[1]y=r^2
    の証明でPが座標軸上にないときで円上にあるからという条件というのがあるのですが、この条件をよく忘れます。
    なぜでしょうか?

    返信削除
  2. 円x^2+y^2=r^2上の点P(x[1],y[1])における接線の方程式は
    x[1]x+y[1]y=r^2
    この接線の式はPがX座標軸上にある場合でも、Y座標軸上にある場合でも成り立つ式です。
    本ブログの証明方法では、y’を計算した上で接線の方程式を計算しましたので、X座標軸上にP点がある場合を除外して計算しました。
    X座標軸上にある場合は、別途計算して、その場合でも上の式にあてはまることが証明できます。
     y’=dy/dx
    を利用して接線の方程式を求めるのでそうなるのですが、
    微分量dyをdxで割り算する計算を経由しないで、y’のところをdyとして、x’のところを、dxとして計算をすすめるならば、
    Y座標軸上にP点が来る場合も除外せず、例外を設けず計算をして、
    接線の方程式を得ることができます。

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